補聴器創りは大変…理想と現実…  前回の更新:2024/10/20    更新:2025/04/02


*補聴技研では次の手順で補聴器を『作って』います

 @ 『聞こえの把握』;きめ細かな聴力測定で詳細なオージオグラムを作成する
    …通常250Hzから6kHzまでの9ポイント。不快に感じるレベルも把握。(下図の左)

 A 基本は『耳に補聴器を合わせる』;40年以上変わらないこだわりです。
  *オージオグラムに応じた『実現可能なきこえの目標』を設計する
    …聴力・補聴器の増幅能力・騒音の影響を考慮して独自設定⇒下の図、左に表示。
     *この段階で「普通の聞こえにはできない」ことを十分知らせておく。


  聴力測定結果と目標設定 

  *補聴技研で設定する『きこえの目標』です

  目標達成のための増幅度、挿入利得特性 

  *きこえの目標達成のための『増幅度』です
   …これは『挿入利得』というものです
  *左右差補正を考慮した設定がされています
 


 B 『きこえの目標』に合う『音色』(適切に補う周波数特性)を設計する
    …補聴器の増幅能力・騒音の影響等を考慮して設定⇒上の図の右に表示
      *これは実際に有効になる増幅度のことで、『挿入利得』といいます

 C 実在する補聴器に近い試聴器で設計通りの『音色』を作る
    …相談者の利用環境・目的等を十分考慮して選定、音響的な調整も済ます。


  重ねて示した左右差設定  
 *別な方に対する補聴器の調整例です

   250Hzから1.5kHzまでに5dBの聴力差のある
  方に対する、聴力差補正を考慮した調整例を
  重ね合わせて示しています。

   250Hzの部分は補聴器調整機能上、適正と
  思われる『差』を付けられませんでしたが、
  他はちょうどよくできました。

   補聴技研はここまでこだわって調整します。
  それでも思うように満足いただけないことが
  多く、苦労します…私だけでしょうか?


 D 試聴器を耳につけ、装用閾値(聞こえる限界)を測定して『目標』に合わせる
    …『きこえの目標』に限りなく近づくよう、『増幅度』を微調整する。


  目標に合わせられた、補聴器調整結果 
  左の図の青点が補聴器を付けた聞こえ、
 つまり『装用閾値』です。


  目標にほぼ沿った結果が得られましたが、
 4kHzの装用閾値は不足気味でした。実用上
 十分役に立つことがコメントから確認できて
 います。1kHzより低い音は、外からそのまま
 入ります。補聴器の影響はありません。

  調整には『ベント』の大きさを変えて効果を
 確認することが重要です。ここに『試聴』の
 大きな役割があります。 貸し出し補聴器で
 そこまで精密にできるでしょうか?


 E 自分の声が響かない『ベント』を設定して効果を確認する
    …聴力に応じた『通気口』の設定のことで、自身の声と外側からの音声のバランス調整が重要。

    *耳に入る部分の『耳せん』に相当する部品の調整です。安定した聞こえを目指すには
    『イヤモールド』と呼ばれる 専用耳せんを使った方が確実です。
     ⇒補聴技研ではユニークなチェック法を用いています。来所されれば「なるほど!」(笑)。

 F 補聴器を付けていても大きな音で不快感のないように調整・確認する
   …周波数ごとに十分な調整をして不快感を未然に防止⇒試聴器作りでも膨大な時間がかかる。

    *試聴の結果、購入希望のあった場合は相応の器種中最も安価な器種を販売。
     ※『試聴』により相談者の期待していた以上の『きこえ』に納得・満足され、ようやくご購入。
      …本当によく聞こえる補聴器(個人ごとに変わる)作りは簡単にできるものではありません
     ※難聴度の軽い方ほど『自然な聞こえ』にするのが困難で、安価な補聴器では作れない問題が
     ここで生じます。本当にお悩みの方でないとご購入には結び付きません…仕方ありません。

 G 補聴器ご購入後、必要に応じたアフターケアを実施します
   …軽微なトラブルはメール等で対応方法を知らせて解決する。販売後も大変です。

    *改善不可能な場合は、再来所または補聴器のみの再調整(送っていただく)で改善を図る。
     ※この方は『より自然な聞こえ』と使い易さを求めて耳穴奥に納まるタイプ(IIC) を作りました。
      …さらに自然な聞こえと使いやすさに一層満足されましたが、それでも不具合が発生!
       ⇒騒がしい環境ではまるでダメだったことに気づいたのです。結局最新型器を試聴…
       *1週間以上試聴して、その性能に間違いないことが確認されました。所長も同じ環境で
       実験を重ね、確かにイイと実感。
騒音下でもよい聴こえを維持するには高性能器でないと
       ムリで、『軽いほど補聴器づくりは困難になる』を再確認。そうなると、価格の問題が…

 H 購入成立前の『ガード』が堅い
   …厳しい現実が『理想の聞こえどころではない』を示唆している(怒+呆)
     *ご覧ください。次のような障害に出逢えば、『よいきこえ』入手は瞬時に無縁となるでしょう。
      これらの大きな障害に打ち勝てた方だけが補聴技研に辿り着きます…熱意に感謝です。

    1 価値観;『きこえ』にカネを出さないことが、結局人生の大きな損失につながる可能性…
     ●
『蜂の子』は買うが、補聴器は「とんでもない」。
       ⇒難聴の軽減の可能性を永遠に知らずに生活する…
     ●両耳同じ難聴度なのに「高いので」と、片耳分購入
       ⇒聞こえるようになっても、不快感と違和感がいつまでも消えない。肩こりまで発症…
     ●補聴器が高いので、親の使っていたのをそのまま『再利用』
       ⇒補聴器の本当の効き目を知らず、音が響いたり、不明瞭な聞こえに苦労し続ける。

    2 聴覚障害;聴覚中枢に障害がある ⇒ 音声を大きくしても聞き分け不可能…悔しい…

    3 『義理』;無料で試聴補聴器貸し出しを受け、よく聞こえなくても「悪いから…」とご購入済

    4 『足』がない;購入したくても、送迎してくれる家族や知人がいない

    5 距離;よく聞こえる補聴器を作ってもらえることは解ったが、遠い(福岡県/沖縄県)ので…
     *一方、北海道や岩手県在住の購入者がそれぞれの自宅で再調整を受けている。(※)
       ※『遠隔調整』のできる補聴器で、何度も調整可能になりました。
        ⇒⇒結局、来所1回で『よく聞こえる補聴器』を手に入れられたことになります。

    6 通販被害;通販の補聴器を購入して聞こえなかった経験から、補聴器不信

    7 カタログ表示;どこの店でも『よい聞こえ』が容易に作れると思い込み近くの補聴器店へ行く

    8 カタログ表示;『聞こえ難くなる原因』と『補聴器の素晴らしさ』が綺麗に説明されているが、
     ⇒『聞こえ方を補聴器で改善する』具体的説明が、全くない…えっ?

    9 カタログ表示;『本音と言い訳』は目立たない場所に小さく⇒「気づけなかった(ダマされた)

    10 業者不利な情報を伝えてくれない;『個人差』で調整不良の責任を回避する補聴器専門店
     ⇒補聴器の限界で聞こえ難いことに気づけず、適切な助言ができない例もよくある。

    11 『慣れ』;調整不十分でも『大脳』が慣れてしまい、より適切な調整を受け付けない(詳細は下に)

    12 騒音;聞きたい言葉が騒音に埋もれて、騒音があると無力(詳細は下に)


    13 聴力レベル;ほとんど普通に聞こえている方が「会話が聞こえない」…平均聴力レベル20dB台の例。
     ⇒補聴器を使うとかえって不自然な結果しか作れない。申し分ない自然な聞こえを作れる補聴器は
     高機能が求められるので、高価。…『価値観』次第で新たな壁(価格)は破壊できるはず

    14 聴力レベル;『聞こえる部分』がない…平均聴力レベル110dBを超える例でよくある。
      ⇒ 音を電気信号に変換する内耳の機能がほとんどなくなり、うるさいだけ。
      ⇒ 脳に信号が届かないので『音』を全く感じない。⇒人工内耳なら『感じる』ことができる。

   ※
補聴技研独自の『補聴器適用限界』が表示してあります ⇒⇒ 6 当然ですが…

   ※最新型デモ器を上記方法で自分の耳(平均10dB以下)に応用した実験では…
        ⇒⇒聞こえる音が自然で明瞭で疲れないことを体感。何度も感動(トリハダ)。
        ⇒⇒『自分の耳』を本当に作れました。来所される方々に役立てたい!


 *さらに意外なところにも厳しい現実があって…

  *たとえ不十分な調整の補聴器でも長い間に脳が適応してしまい、新しい『きこえ』を
  受け付けてもらえないことがあります。

   不十分な調整だが何とか聞こえていても騒音の影響を強く受け易い。新しい補聴器にしたら一層聞き難い。
   ⇒『理想的な聴こえ』にできても、新たな聞こえに大脳が強い違和感を感じて受け入れない。期待外れの結果に
   失望感が先に出た…購入器を長時間使い続けて新たな『聴こえ』を蓄えていただかないと…。


 *悩みながら使っておられた補聴器が古くなり…(聞こえる範囲が非常に狭い方)

   新しい補聴器を購入して『理想的な聴こえ』に近づけられても、騒がしい環境ではまるでダメ。
   ⇒不十分な調整でも大脳が苦労して『聞こえの解読』をしてきた。その『学習成果』が新型器の音に全く使えない
    旧型器でも激しい騒音環境下では聞こえにくくなるはず。新型器を極力『同じ音色』に調整して、その聞こえ方を
   確認することで高性能器の有効性(騒音との分離)を確かめるしかありません。
   ⇒レストラン内では、騒音が聞きたい音声と同じ『会話音』。非常に高度な『騒音分離機能』がないと改善はムリ。
    新しい補聴器の『音色』の違いより、使用環境での工夫が強く求められます⇒感度を下げて「近くで話してもらう」。
     *大きな騒音環境下でも使いたい方には、高性能機でないと無力なことがあります。

 *古い補聴器を長期間ご愛用(非常によく聞こえていた)。それが壊れて…

   愛用器が『アナログ』だった。長い間使って、その音に脳がすっかり適応。新器種はディジタル補聴器だが、意外にも
  音質が悪く、同じ聞こえ方(装用閾値)に合わせても「音が硬くてキンキンする」などと納得していただけない。
   ⇒出力に余裕があり、高い音をしっかり出せて潤いに富む音を作れる補聴器が存在しない。音質改善した高性能器も
   登場してはいるが、重度難聴者には低出力で使い物にならなかった(当時)。
   …所長は『ハイパワー+高品位音質』の補聴器をずっと待っていて…登場!!;上位器種で実現! ('20/02〜)

 *補聴器を使ってある程度よく聞こえるようになった。でも騒がしい場所では聞こえない…

   静かなところで聞こえたのだから、大きな騒音の中でも同じように聞こえると期待(誤解)して失望…
    ⇒要望と価格の関係上、安価な器種の中に該当器種はない…高性能器でも改善に不満足を感じたが、技術の
    進歩で騒音と会話音分離が可能に…何とか使える新型器が続出するも、値段が高くて…('24/07〜)
     *大きな騒音に対応するには補聴器の『騒音環境用プログラム設定』調整に加え、話しかけの細かな
     配慮も有効です。現実的には、価格と聞こえの問題で思うような改善はできません(本音)。



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   調整方法の詳細な説明 ⇒ from 1980    海外に向けて発信! ⇒ 英語版

   調整の仕方 ⇒ 比べたら  こだわり調整 ⇒ 高精度
  調整不良? ⇒ ???


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   ※補聴器づくりは本当に大変。だからといって『通販』には手を出さないでくださいね!